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国家とは何だろうか

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

小川和久『日本人が知らない集団的自衛権』(文春新書)を読む。①集団的自衛権について考える前に知っておくこと

読書メモ

 軍事について勉強する中で、今回は「集団的自衛権」について考えてみたい。

 

日本人が知らない集団的自衛権 (文春新書)

日本人が知らない集団的自衛権 (文春新書)

 

 

 集団的自衛権とは何であるか、如何なる場合に発動されるるのか、或いはそれ自体は日本国憲法に違反するや否や、という議論が昨年盛んに行われた。

 私としては、個別的自衛権も発動できなくてどうして集団的自衛権の賛否を論ずるのか理解に苦しんだが、現実には日米安保に基づいてアメリカのアフガン戦争、イラク戦争に協力している。これは既に集団的自衛権の行使ではないのか、一体国会では何を議論しているのか。中東時勢が不安定になれば、日本の産業はどうなる。それよりも個別的自衛権をもっと強い抑止力とするために、憲法を改正して自衛隊を正規軍とする方が余程意義があると思う。

 

 私の所見はさて置いて、同書はQ&Aを繰り返す構成になっており、読みやすい。そして如何に日本国内での議論が空虚か、世界標準から見て話にならないかがよく分る。

 

 

 「Q3 本格的な説明に入る前に、集団的自衛権を考えるうえで重要なポイントをわかりやすく紹介してください」(p9)

 

 「A それは以下の2点に尽きます。

 第一は、「そもそも国家の平和と安全をどう確保するのか」を考えること

 第二に、日本の防衛力の現状を直視すること」(同)

 

 日本国家の「平和と安全」を確保するには、日本単独で軍事力を高めて米中露南北朝鮮と対峙するか、どこかの国と軍事同盟を結んで協力するかのどちらかしかない。現実にはアメリカと安全保障条約を結んでいる。

 

 仮に武装中立を目指すとして、「防衛大学校の2人の教授の試算を紹介しておくなら、いまと同じレベルの平和と安全を手にしようとすれば、年間の防衛費は22兆~23兆円にも上るとされています」(p10)

 「これに対して、日米同盟を活用する場合は・・・現在の年間4兆8000億円ほどの防衛費プラスアルファで、世界最高レベルの平和と安全が実現できている」(p10-11)

 

 国民の税負担を考えると日米安保を最も現実的な選択であるし、軍事力から見てもアメリカと組むのが最も日本の安全に寄与する。

 なお、平成28年度の一般会計予算における防衛費は5兆円であった。

 

 日本の防衛力の現状については、「自衛隊はこんなに強い」、或いは「こんなに弱い」といった楽観的、悲観的な意見が様々ある。

 

 「自衛隊は、本格的な海外派兵をしたり、戦力を投入して外国を占領できる構造を持つ軍事力ではないのです。できることは限られた国土防衛における戦闘、つまり「専守防衛」だけで、侵略戦争などできるはずもないのです」(p34)

 

 自衛隊に敵基地攻撃能力が無ければ、敵の攻撃力が尽きるまで防戦一方の戦いをする外ない。その間、一体どれだけの自衛官が命を落とし、国土が、国民生活が犠牲になるだろうか。畢竟、自衛隊には米軍の補助の役割しかないのではないか、そう考えれば個別的自衛権さえ発動できない、しないのも納得できる。更に言えば基地を提供し、後方支援をするなどの集団的自衛権を行使しているのではなく、単に米軍の御用聞きをしているだけではないかとさえ疑われる。

 

 同書「はじめに」は、「日本でしか通用しない議論はやめよう」として、以下のように締めくくる。

 

 「日本の議論は日本国内でしか通用しないものに終始してきました集団的自衛権に賛成する側は国民に対して言い訳じみた説明を行い、反対する側は否定する世論を煽ることに血道を上げてきたのです。しかし、両者とも結果を考えたことがあるでしょうか。そこから生まれるのは、日本でしか通用しない価値観に基づく法律や制度です。それが、自衛隊や警察、海上保安庁の手足をがんじがらめに縛ることになります。そして、集団的自衛権に関わる事態だけでなく、たとえば尖閣諸島などに武装集団が上陸を図るグレーゾーン事態のようなとき、投入される自衛隊や警察、海上保安庁が向き合うのは何の制約も受けてない、フリーハンドを持つ相手なのです。

 このように、日本でしか通用しない議論に終始していれば、むざむざ殺されることがわかっていながら自衛隊や警察、海上保安庁を派遣することになるのです」(p14)

明治維新を中学歴史教科書で振り返る ③新政府樹立と祖国統一戦争

雑記

1867 大政奉還 王政復古の大号令

1868 戊辰戦争 五箇条の御誓文

1869 版籍奉還 北海道

1870 

1871 廃藩置県 解放令 

1872 学制 (壬申戸籍

1873 徴兵令 地租改正

1874 民撰議院設立建白書 屯田兵

1875 

1876 

1877 西南戦争

 

 

 明治維新は、徳川慶喜大政奉還を受けた朝廷の王政復古の大号令に始まる。

 版籍奉還廃藩置県解放令によって、総ての土地人民を一度に天皇にお返しし、改めて戸籍を作り、知事や戸長(現在の町村長に当たる)を任命した。

 

 国家を維持するには軍事力と経済力が欠かせないが、これには国民の協力が必要である。従って国民は兵役義務と納税義務を負う。そこで徴兵令地租改正が公布された。

 国家が発展するには国民一人一人が自ら学び、考える力を養わなければならない。また、標準語としての「国語」を広め国民を統一する必要もあり、全国に小学校が作られた。特に「邑ニ不学ノ戸ナク家ニ不学ノ人ナカラシメン事ヲ期ス」という学制序文は現代にも通ずるだろう。

 

 戊辰戦争とは祖国統一戦争である。幕府時代には全国に多数の大名が居り、ある程度は幕府の統制を受けたが、実際には各藩は独自の軍隊を整え、通貨も発行していた。国家を統一するには、つまり新政府の権力(統治権)を全国に及ぼすには、旧幕府勢力を一掃しなければならない。一方で旧大名にとって新政府軍は反乱軍であるから、これを掃討しなけらばならない。そこで両者が鳥羽・伏見で激突し内乱(戊辰戦争)となる。

 新政府軍が勝利し、新政府の権力が確立した。この力を背景に版籍奉還、廃藩置県が断行され、戸籍が作られ、日本全国が新政府の下に統一された。つまり国家を統一するにはまず軍隊が必要で、国家は軍隊に守られて初めて活動できる。日本国家は政府軍によって統一され、これを基に国家の軍隊に発展させた。

 

 軍事は武士(後の士族)の特権だった。徴兵令によって平民が武器を手に取ることが出来るようになり、それは士族の特権の廃止を意味する。これに不満を持つ士族が反乱を起こすも、「日本軍」に鎮圧された(西南戦争)。

 

 ▼国家と政府、統治権の関係に付いて

ichijokanji.hatenablog.com

 

【憲法小論Ⅱ】 「国民主権」という虚像

憲法小論

 主権という語は、①最高独立性、②統治権、③最高機関の3つの意味で用いられる。これについては前回の記事をお読みいただきたい。

 

ichijokanji.hatenablog.com

 

 では、国民主権とは何か。国家は国民の団体であると考えれば、天皇・皇族を含む(広義の)国民が主権を有する、ということになる。しかし国民主権とは、君主主権の対立概念であるから、この国民に天皇・皇族は含まれない(狭義の国民)。

 また君主主権とは、一般には君主が統治権の主体であるという意味で理解されているから、これに従えば国民主権とは、国民が統治権の主体であるという意味になる。しかし、統治権の主体は国家であるから、この理論は成り立たない。

 

 ならば最高機関だろうか。国家権力は、法律上の権力と政治上の権力とに分けられる。前者は名目上、後者は実質上と言い換えてもいい。帝国憲法では、法律上の権力は天皇、政治上の権力は帝国議会がそれぞれ分掌していた。正に君民同治の政治が行われていた。法律は、天皇の裁可によって法律上の効力を与えられるが、その法律案は必ず議会の協賛を経なければならず、また天皇立憲君主として裁可を拒むことは一度もなかった。

 日本国憲法においても法律上の最高機関は天皇であり、政治上の最高機関は国会である。従って日本国憲法第41条に定める「国権の最高機関」とは、国会は政治上の最高機関であることを宣言している。その意味では統括機関説を採ることになるが、詳しくは別に譲る。

 国会が政治上の最高機関である以上、国民主権とは、国民が法律上の最高機関であると解するしかない。しかし、凡て法律は天皇に奏上され(国会法第65条)、御璽を鈐した後公布される。事実上、形式的ではあるが天皇の裁可を経て法律として効力を持つことになる。国会の召集も、内閣総理大臣の任命も、最高裁長官の任命も、総て天皇の法律行為(国事行為)を待って法律上の効力を持つ。つまり、日本国憲法においても法律上の最高機関は天皇である。従って、国民が法律上の最高機関たることはない。

 国民が最高独立の権力を有することも有り得ない。それは国民の前衛政党が国家を統治する体制である。

 

 以上より、憲法上の「国民主権」とは空文でしかないことが明らかになった。

 

 しかし日本国憲法に定める国民主権に、あえて意味を与えるとすれば、議院内閣制では、内閣は国会を通じて間接的に国民の支持を得なければならず、つまり国民が国政上重要な地位を占めるという意味の「政治的美称」という程度だろう。

【憲法小論Ⅱ】 国家と国民と統治権

憲法小論

 憲法は、国家の組織及び作用に関する基礎法をいう。国家の組織とは政体のことであり、国家の作用は立法、行政、司法に区別される。従って憲法を理解するには政体、立法、行政、司法について理解しなければならない。しかし、これらを明らかにするには、まず国家とは何かについて説明する必要がある。

 

 国家について簡単に説明するならば、

  ①国家は国民の団体である

  ②国家は法人であり、統治権の主体である

  ③統治権は国家の権利であり、義務である

  ④国家の統治権は、国家の機関である政府が行使する

の4点にまとめられる。

 これを図で表すと、以下のようになる。

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 権利は義務を伴う。従って政府の行使する統治権に対して、国民は服従義務を負う。同様に、政府の統治義務に対応して国民は幸福追求権が認められる。国家と国民には二つの権利義務関係が併存している。

 もし国家に統治権が認められなければ、それは無政府状態であり、国家が成立しているとは言えない。従って国家は、統治の義務を放棄することが出来ない。

 

 では統治権とは何だろうか。端的に言えば、土地人民を支配する権利であるが、具体的には、

  ①国民たるべき資格要件を定め及びその国民を支配する権利(対人高権)

  ②自国の領土を定め及びその領域内における総ての者を支配する権利(領土高権)

  ③自由に自国の政体を定めその組織を定める権利(組織高権)

の3つを合わせたものを国家の統治権と言う。

 

 国家のように統治を行う団体には、外に都道府県や市町村のような地方公共団体がある。国家と地方公共団体との違いは、国家の権力は最高独立すなわち何人にも支配されないものであるが、地方公共団体は必ず国家の権力に服し、国家によって附与された統治権の一部を行使しているに過ぎない。

 

 ついでながら、「主権」についても触れておきたい。主権の語は、①最高独立性、②統治権、③最高機関の意味で使われることがある。

 最高独立性とは本来の意味であり、上述の通り、自己の意思に反して他より支配されない力をいい、国家権力の性質を示すものである。

 統治権は最高独立性とは異なり、支配する力をいう。「主権が及ぶ地域」という場合は、「統治権が及ぶ地域」と言うのが正しい。

 最高機関とは、国家の意思を最終的に確定する力を有する機関をいう。「主権者」と最高機関に就く者を指す。美濃部は「天皇主権」をこの意味で用い、天皇は国家の最高機関であるという天皇機関説を説いた。

 

 では「国民主権」とは何だろうか。これに付いてはかなり私見が入るので、次回にしたい。

 

 

 ※参考文献

  美濃部達吉憲法講話』(大正7年)

  美濃部達吉『改訂 憲法撮要』(昭和21年)

「地政学ブーム」に付いて考えたこと

雑記

 昨年から、書店には「地政学」を題材とする著書が多く並んでいる。何故「地政学」が流行っているのか。

 

 そもそも地政学とは何なのか。

 

 「安全保障を地理的な環境から論ずるやり方を地政学と言う」(鍛冶俊樹『戦争の常識』)

 「地政学は、帝国主義の論理です。国家と国家が国益をかけて衝突するとき、地理的条件がどのように影響するかを論じます」(茂木誠『世界史で学べ!地政学』)

 

 このような本が売れるのは、第一に「面白い」からだろう。では何故面白いかと言えば、学校では教わらない、教科書に書かれない歴史が書かれているからだ。更に、国際ニュースを観ても、テレビや新聞では解説されない事件の根本原因を知るヒントになる。つまり、日本人の知的好奇心が地政学ブームを生んだと言えるだろう。

 しかし、これは幕末に禁書とされた国際政治の本が回し読みされたのと似ているかもしれない。そう考えると、日本は既に安全保障上危機的な状況にある。

 更には、学校教育が日本人のレベルに合って居ないことを証明したとも言える。これまでは政府が日本人を「お花畑」に閉じ込めて来たが、日本人は自ら抜け出した。自分の国は自分で守ろう、そのためには先ず、自ら学ぼう。それは正に福澤諭吉の『学問のすゝめ』が説いた通りである。

 

 現在の日本は幕末と同じ状況にあるのではないか。そうであるなら、その後の日本が歩んだ明治、大正、昭和の時代について学び直す必要があるのではないか。ということで、もう少し歴史についての記事を書いていこうと思う。

 

 ▼引用した文献

戦争の常識 (文春新書)

戦争の常識 (文春新書)

 
世界史で学べ! 地政学

世界史で学べ! 地政学

 

 

明治時代を中学歴史教科書で振り返る ②大化改新と明治維新

雑記

 白村江の戦い、薩英戦争・下関事件のように、日本の安全保障が脅かされると中央集権化へ向けた力が働く。政治体制を改めるほどの大きな力が。

 

 大化改新以後、都を難波に移し(後、飛鳥に戻す)、豪族の支配していた土地、人民を天皇に返し(公地・公民)、律令を定めて都から国司を派遣し、地方の豪族を郡司に任命した。戸籍を作り租庸調、防人の義務を課して税制、軍制を整えた。

 

 明治維新以後、(事実上の)首都を東京に移し、大名が支配していた土地、人民を天皇に返し(版籍奉還)、廃藩置県を断行して中央から知事を派遣し、地方の名主や庄屋を戸長に任命した。戸籍を作り地租改正徴兵令を定めて税制、軍制を整えた。

明治時代を中学歴史教科書で振り返る ①太字年表(その1)おおよその流れ

雑記

 太字年表とは、かつて塾講師をしていたときに歴史が苦手な塾生に指導した、教科書の本文(まれに注釈)の太字のみで作る年表をいう。試みに東京書籍『新編新しい社会 歴史』を参考に作った。

 

1868 戊辰戦争 五箇条の御誓文

1869 版籍奉還 北海道

1870

1871 廃藩置県 解放令 日清修好条規 岩倉使節団

1872 学制 

1873 徴兵令 地租改正

1874 民撰議院設立の建白書

1875 樺太・千島交換条約

1876 日清修好条規

1877 西南戦争

1878

1879 琉球処分沖縄県

1880 国会期成同盟

1881 自由党板垣退助) 

1882 立憲改進党大隈重信) 

1883

1884

1885 内閣制度

1886

1887

1888

1889 大日本帝国憲法

1890 帝国議会 教育勅語

1891

1892

1893

1894 陸奥宗光日英通商航海条約) 甲午農民戦争 日清戦争 

1895 下関条約 三国干渉

1896

1897

1898

1899

1900 立憲政友会伊藤博文) 義和団事件

1901 八幡製鉄所

1902 日英同盟

1903

1904 日露戦争

1905 ポーツマス条約

1906 南満州鉄道株式会社

1907

1908

1909

1910 韓国併合

1911 小村寿太郎(日米通商航海条約) 辛亥革命孫文 三民主義) 中華民国

 ※内政外交人物その他とした

 

 これで①自由民権運動の流れ、②国境を画定し、日清・日露戦争を経て独立国として認められるまでの流れが分かると思う。

 「明治維新の目的が不平等条約の改正のための国造り」であったなら、明治時代そのものが維新の時代だったと言える。

 

 なお、年表に馴染まないものを以下に挙げる。

 明治維新 藩閥政府 富国強兵 殖産興業 官営模範工場 文明開化

 福澤諭吉 中江兆民 自由民権運動 征韓論

 帝国主義 条約改正 欧化政策 財閥

 横山大観 黒田清輝 樋口一葉 夏目漱石 森鷗外 野口英世