一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

今の自衛隊では、「グレーゾーン事態」に対応できない

 まずグレーゾーン事態とは何か。

 

 「安倍内閣が示した15事例のうち『武力攻撃に至らない侵害』が、いわゆる『グレーゾーン事態』です。武力攻撃とまでは言えない緊急事態のことで、しかも現行法制ではうまく対応できないか、対処法が決まっていないケースのことです(小川和久『日本人が知らない集団的自衛権』p126)

 

 グレーゾーン事態に当たる事例として、

  ①離島等における不法行為への対処

  ②公海上で訓練や警戒監視中の自衛隊が遭遇した不法行為への対処

  ③弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護(平時)

の3つが挙げられているが、ここでは離島防衛(島嶼防衛)について考えてみたい。

 

 「外国からの明らかな武力攻撃があった場合は、これは個別的自衛権の問題ですから、防衛出動で自衛隊が反撃できますが、それ以外のケースではこれまで、警察権を使って対応することになっていました(同p127)

 

 武力攻撃事態が発生した場合、内閣総理大臣自衛隊に防衛出動を命ずる(自衛隊法76①)。しかし、「漁民と思しき外国人」が離島に上陸したとしても、武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められない場合は、警察権を以て対応するしかない。

 

 「警察組織である海上保安庁と警察には、武装集団を排除するための装備と態勢が備わっていないのです。投入しても、殲滅されるのは目に見えています(同p128)

 

 警察組織の活動には「警察比例の原則」が適応されるが、自衛隊の活動にも適応される。

 

 「警察比例の原則とは、警察権の発動に際し、目的達成のためにいくつかの手段が考えられる場合にも、目的達成の障害の程度と比例する限度においてのみ行使することが妥当である、という原則を言います。実質的には、複数の手段がある場合は、対象(国民)にとって最も穏和で、侵害的でない手段を選択しなければならない、と解釈されています。

 もっとかみ砕いて言うなら、相手がピストルならこちらもピストル、ライフルならこちらもライフルというような武器の使い方が求められ、軍事組織が最も避けなければならない『兵力の逐次投入』にあたるような対処しかできないのです。軍事組織は、任務達成のために『兵力の集中使用』を旨としています。相手を上回る威力の武器で、一気に制圧するのが軍事組織の基本的な考え方です(同p131-132)

 

 離島に外国人が上陸し不法行為に及んだ場合、つまり防衛出動の要件に当たらない場合には警察権を以て対処することになるが、仮に治安出動(自衛隊法78)によって対処するにも警察官職務執行法第7条が適用される(同89)。

 

 「たとえば相手が繁華街をうろつくアウトローの集団だったり、尖閣諸島に不法上陸するにしても、単なる反日活動家であれば、警察比例の原則を守る形でも大丈夫かもしれません。

 しかし、日本側が対峙し、場合によっては実力を行使して排除しなければならない相手は、外見上は反体制活動家や漁民を装っていても、本格的な軍事訓練を受け、対戦車火器くらいは備えている集団だと思わなければならないのです。

 むろん、世界の軍事組織と同じように持てる武器を集中的に使って日本側を攻撃してくるのは、常識以前の問題です。警察比例の原則で縛られていては、いかに自衛隊のレベルが高くとも大きな損害は避けられませんし、もともと対戦車火器レベルの小型武器を備えたこともなく、訓練もしていない海上保安庁や警察の部隊は一人の生存者もない殲滅状態になるのは覚悟しなければなりません(同p132-133)

 

 「相手が離島に手を出したとき、警察比例の原則に手足を縛られている日本側は甚大な損害を出したあげくに上陸され、占拠され、送り込まれてくる相手の増援部隊によって占領は既成事実化し、日本は領土を失うことになるのです。

 尖閣諸島のような離島といえども、日本に手を出せば確実に撃退され、場合によっては殲滅されると思わせるだけの備えを見せなければ、手を出させないだけの抑止効果は生まれないのです。

 そのためには、治安出動や海上警備行動を迅速に発令できるようにするだけでは無意味です。警察比例の原則を前提とする警察官職務執行法第7条の規制を外し、軍事組織として武器を使用できるようにしなければ自衛隊を投入しても犠牲者を出すだけです(同p134)

 

 離島に外国人が上陸した時点で領土を侵されているのだから、すぐさま自衛隊を出動させ、必要に応じて海上保安庁に切り替えればいい。治安出動があった場合、防衛大臣海上保安庁を指揮下に置くことが出来る(自衛隊法80①)。

 軍事組織として武器を使用できるようにするには、自衛隊の行動規範をネガティブリストにする必要があるし、ある活動が適切であったか否かを裁定する軍法会議が必要となる。いずれにしろ憲法改正を待たなければならない。

 

 

 ▼引用図書 

日本人が知らない集団的自衛権 (文春新書)

日本人が知らない集団的自衛権 (文春新書)