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一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

美濃部達吉『憲法講話』 4.国家は権利能力の主体である

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 美濃部達吉『憲法講話』 3.国家の特徴と定義 - 一条寛治のブログ

 

 「法律上から見て、国家は一の法人であると申します。法人とは法律上の人といふことで、即ち法律上人と同一視せらるゝことを言ひ表はすのであります。前にも述べた通り、凡て団体は其れ自身に生存目的を有し活動力を有つて居るもので、此等の点に於て団体は恰も人間と同様の性質を有つて居るものであるから、法律上の見地に於ても団体其れ自身が恰も一個の人であるが如くに見做し、之を法人といふのであります美濃部達吉憲法講話』大正7年、p19-20)

 

 「法律上に於て人といふのは、権利能力の主体といふことであります。・・・法律上に於て権利能力の主体といふのは、利益の主体たり、意思力の主体たることが、法律上に認められて居る者を謂ふのであります。団体が法人であるといふのは、即ち団体が自己の利益を有し、自己の意思力を有することを法律上に認められて居ることを謂ふので、約言すれば、団体が法律上の権利能力を有すといふことに帰するのであります。

 国家が一の法人であるといふのも、亦之と同様に、国家が権利能力を有することを意味するので、国家は恰も其れ自身に一の人であるかの如くに、権利能力を有し其の権利能力に基いて種々の権利を享有するのであります(同p20-21)

 

 国家同士が条約を結び、互いに権利を有し義務を負い得るのは、国家に権利能力があることを認めているからである。

 

 「国家の享有する権利・・・大別すると二種類に分けることが出来ます。第一種は、・・・財産権であります。総ての法人又は一個人は、何れも財産を所有し之を処分することが出来ると同様に、国家も亦財産権の主体たることが出来ることは勿論であります。第二種は、国家に特有なる権利でありまして、即ち国内の総ての人民に対して命令強制を為し得るの権利であります。是は国家のみが享有して居る権利で、・・・地方自治団体・・・は、何れも国家から此の権利を附与せられて居るものであります。此の国家の権利を称して、統治権といふのであります(同p21-22)

 

 財産権の主体としての国家を「国庫」と言うこともある。国会議員は「国庫から相当額の歳費を受ける」(日本国憲法第49条)といい、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」(民法第239条第2項)という場合がこれに当たる。

 統治権については、例えば青森県青森県民、青森県の領域を統治するのは、国家の統治権の一部を附与されているからである。青森県が勝手に土地人民を支配しているのではなく、必ず国家の定める法律に従っている。

 

 「国家の統治権は、国家の最も大切なる権利で、之に依つて国家が国家としての生存を全うすることが出来るのであります。統治権とは、一口に申せば命令強制の権利といふことが出来ますが、今少し精密に申すならば、国家は其の統治権に基いて、第一には、一定の人民を自国の臣民と定め、其の臣民たる者を独占的に支配し、之に対して命令を為し其の命令を強制し、其の権利関係を定むることが出来ます、此の権利は通常之を対人高権と申します。約言すれば臣民たるべき資格要件を定め及び其の臣民を支配するの権利であります。第二には、一定の土地を自国の領土と定め、其の領土内に在る者は、自国の臣民であると、又は外国人であるとを問はず、凡て之を独占的に支配することが出来ます。此の権利を称して、領土高権と謂ひ、又は単に領土権と申します。約言すれば、自国の領土を定め及び領土内に於ける総ての者を支配するの権利であります。凡て新領土を取得するのは、領土権の拡張であります。最後に第三には、国家は其の統治権に基いて、自由に自国の政体を定め其の組織を定むることが出来ます。此の権利を称して組織高権と謂ふことが出来ます。対人高権、領土高権及び組織高権、此の三つを合せたものが、即ち国家の統治権であります(同p22-23)

 

 国家は国民の団体であるから、国家には構成員たる国民の範囲を定め、これを支配する権利を有する(対人高権)。また国家は地域団体であるから、一定の土地を自国の領土と定め、その領土内における土地人民を支配する権利を有する(領土高権)。領土権には領海権、領空権も含まれる。

 国家は団体であるから機関を通じて活動し、その機関の組織は国家自身が自由に定めることができる(組織高権)。一般にはその国の歴史的の事情によって定まる。