一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

今の自衛隊では、「グレーゾーン事態」に対応できない

まずグレーゾーン事態とは何か。 「安倍内閣が示した15事例のうち『武力攻撃に至らない侵害』が、いわゆる『グレーゾーン事態』です。武力攻撃とまでは言えない緊急事態のことで、しかも現行法制ではうまく対応できないか、対処法が決まっていないケースのこ…

集団的自衛権行使容認の根拠は、憲法前文にある

「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」 ⇒再び敗戦の憂き目に合うことのないようにすることを決意し 「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸…

とりとめのない憲法の話(無効論について)

日本国憲法第一段落第一文に「日本国民は・・・この憲法を確定する」とあるから、民定憲法のように見える。しかし上諭に「朕は・・・帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる」とあるから、欽定憲法のようにも見える。 もし日本国憲法が帝国憲法を改正し…

とりとめのない軍事の話(自衛隊について)

自衛隊を軍隊にするには、畢竟、日本国憲法第9条を改廃しなければならない。 他にも軍法会議を設置するには76条を改廃する必要がある。 最高指揮官をどの機関が担うかによって条文を追加する必要もある。普通に考えれば国家元首たる天皇であるが。 いずれに…

お詫びと訂正

昨日投稿した「日本憲法の基本主義は、帝国憲法、日本国憲法に於て変わらない」において、帝国憲法天皇の副立法権について「法律に代わるべき緊急勅令」と書きましたが、正しくは、副立法権とは独立命令の大権を指します。 お詫びして訂正いたします。申し訳…

日本憲法の基本主義は、帝国憲法、日本国憲法に於て変わらない

憲法の基本原理、あるいは基本原則と呼ばれる「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」は、日本国憲法という成文憲法の基本原則であって、不文法をも含んだ日本憲法の基本原理ではない。 帝国憲法の時代に書かれた『日本憲法の基本主義』(美濃部達吉)…

戦争抛棄と軍備撤廃の意味

「国と国との間に平和を維持し戦争の起こることを防がうとする企は、従来も列国の間に屡熱心に試みられた所で、第一次世界大戦の後大正八年に成立した国際聯盟規約に於いて既に締約国は戦争に訴へざる義務を受諾して居り、更に昭和四年に諸強国間に締結せら…

天皇は君主であり、元首である

「君主の観念の要素が何に在るかは、単に理論の問題ではなく、一般に君主政と認められて居る諸国の実際に付いて考察せねばならぬ問題である。而して実際に君主政に於ける君主と共和政に於ける大統領との区別が何に在るかを観察すると、それは権能の相違に在…

国会と地方議会 ①代表機関であること

日本国憲法第41条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。 同第43条① 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。 地方自治法第89条 普通地方公共団体に議会を置く。 「国会は国民の代表機関である。それは国会の議決…

地方自治の目的と立憲政治

地方自治の目的は「自治制度の実施が立憲制度の基礎として欠くべからざるものであるとする点にある」(美濃部達吉『憲法講話 大正7年』p326)。 「若し地方自治なくして単に立憲制度を行ふならば、国の政治は唯多数党の圧制に終つて了」(同同)い、「地方行…

軍政と軍令、自衛隊における「ねじれ」 その2

「軍隊は命令で動き、特に軍令の伝達される経路を指揮系統という。最高指揮官が発した命令は司令官を経由し更にその配下の部隊の長に伝達される。 ここで言う司令官や部隊の長はそれぞれその部署における指揮官である。つまり命令は常にその配下の指揮官に伝…

軍隊の最高指揮権の所在、自衛隊と天皇

「通常、最高指揮官は最高政治権力者と一致する。もしこの両者が別の人物だとするとクーデターが容易に起こせることとなり政治が不安定化するからだ」(鍛冶俊樹『戦争の常識』p64) 「最高政治権力者は国によって異なるが、西欧諸国では本来、国王(女王)…

中国資本による山林の爆買いが止まらない

中国資本による国土の爆買いが止まらない。北海道ニセコ地区は言を俟たず、十勝でも平成22年に清水町の山林が買収された(参考:北海道清水町議会議事録)。帯広市にも、中国人が経営する大農場が存在し、平取町と日高山脈を挟んでつながっている(参考:【…

軍政と軍令、自衛隊における「ねじれ」

軍政とは「軍事行政という意味で、軍の内部の管理を指す」(鍛冶俊樹『戦争の常識』p62)。 「軍は戦争のための組織だが、いつも戦争をしているわけではない。平時には基地や駐屯地にいて、訓練や研究、警備などの仕事にいそしんでいる。当然、基地や駐屯地…

災害対処と予備自衛官

「予備役とはもともと徴兵制と深い関係がある。一定の徴兵期間(大体2年前後)を過ぎると除隊して社会復帰することになるが、そこで予備役に編入される場合がある。編入されると一般社会にありながら年に2週間程度の軍事訓練を受け、緊急事態には即座に召集…

民間防衛における、徴兵制とボランティア

「防災は “Civil Defense” の一つであり、この英語は一般に民間防衛ないし市民防衛と訳されるが、国民を守るという意味であるから国民防衛とするのが適当であろう」(鍛冶俊樹『国防の常識』p68-69) 「もとより災害においては消防が動くのが普通だが、警察…

日本はまだ、自然災害と国防への意識が足りない

「なぜ津波の深刻な想定をしなかったのか?それは津波が外部からの攻撃に他ならないからだ。外部からの攻撃を想定すればテロについても当然想定しなくてはならなくなる。航空機が突っ込んで来る場合も想定しなくてはならず、ミサイルが飛んで来ることも考え…

自衛隊の災害派遣における現実

「東日本大震災で自衛隊が大活躍したのは周知の事実だが・・・あの震災時、米軍がいわゆるトモダチ作戦で日本国民を救援してくれたが、その米軍は武装解除をしていなかった。武器は携行するか身近な所に保管していたのである。 それは考えて見れば当然のことで…

法律上、自衛隊は軍隊ではない

(画像引用元:陸上自衛隊、フォトギャラリー) 「自衛隊は軍隊である。これは世界の常識だ。小銃を肩に担って整然と行進し、戦車がこれに続く。空には戦闘機が飛び、海には護衛艦や潜水艦が航行している。これで軍隊でないなどということはあり得ない」(鍛…

国防と防衛、安全保障との関係

(画像引用元:海上自衛隊) 「防衛と国防の関係を考えると・・・単に防衛と言った場合、軍事的に防衛することを指すことが多い」(鍛冶俊樹『戦争の常識』p31-32) 「防衛とは専守防衛というような限定的な意味ではなく、敵地を攻撃し占領することまでを含む」…

日本で軍事を学ぶには、自衛官になるしかない

(画像引用元:キャンパス案内 | 防衛大学校) 「日本の大学で『軍事』を教える学校は防衛大学校と防衛医科大学校を例外として一校もないでしょう。安全保障を専門とする学者が『国際政治』や『国際関係』を教える講座はあっても、軍人や元軍人が『軍事学』…

【憲法逐条解説】第八章 地方自治

第八章 地方自治 〔解 説〕地方自治に関する規定は、我が旧憲法には無かつたもので、外国の憲法にも或は全く規定して居らぬものも有るが、多数は之に関する基礎原則だけは憲法中に簡単ながら規定して居る。地方制度も国の統治組織中の重要な一部を為すもので…

日本国憲法は、帝国憲法と比較して読むと理解しやすい

「成文憲法の制定は、革命などの政治変動の後、新たな統治に関する基本的法秩序を定める作用である」(渋谷秀樹・赤坂正浩『憲法2統治 第6版』p370) 日本国憲法は、建前としては帝国憲法を改正したものであるが、実際上は新憲法として制定されたのである…

日本にとっての尖閣と台湾、米中にとっての尖閣と台湾。

「尖閣諸島は沖縄の一部として1972年に米国から日本に返還されている。尖閣諸島が沖縄に所属しており、沖縄が日本に所属している以上、尖閣は日本に所属している理屈にならざるを得ない」(鍛冶俊樹『領土の常識』p212) 2012年から突如「中国公船」による日…

鎌倉~室町時代の地政学と、現代

元寇と倭寇の話。 (画像引用元:鷹島神崎遺跡 | 松浦市の観光情報サイト「松恋」) 「1231年、モンゴル軍は高麗に侵攻。1259年に高麗は服属し、1274年、モンゴル・高麗が連合したモンゴル帝国軍(元軍)は軍船900、兵力2万数千で対馬・壱岐両島を占領して…

奈良~平安時代の地政学

律令体制が確立し、緩み始めるころの話である。 「渤海国は朝鮮半島にあった高句麗の子孫が朝鮮半島北部から沿海地方、満州にかけて築いた国で、日本では当時、高麗とも渤海とも呼ばれ、長期にわたり親密な関係を持っていた」(鍛冶俊樹『領土の常識』p198)…

大正時代を中学歴史教科書で振り返る ①太字年表 おおよその流れ

今回も東京書籍『新編新しい社会 歴史』を参考に作りました。 1912 第一次護憲運動 1913 1914 第一次世界大戦(~'18) 1915 二十一か条の要求 1916 1917 ロシア革命 1918 米騒動 シベリア出兵 1919 三・一独立運動 五・四運動 ベルサイユ条約 ワイマール憲…

もし、札幌で大地震が起きたら

過去に起きた「札幌の大地震」(p219)について、道民としては「わが事」でもあるので、何かの参考になればと思い、少し引用した。 北海道の地震 作者: 島村英紀,森谷武男 出版社/メーカー: 北海道大学出版会 発売日: 1994/03/25 メディア: 単行本(ソフトカ…

『憲法撮要』で自衛隊を読む。 軍の編制(自衛隊の編成)①

【『憲法撮要 第二版』】 第一節 軍の編制 帝国の軍隊は陸軍と海軍とに分つ。近時航空隊の益重要を加ふるに従ひ、英国の如き別に空軍の制を建つる者ありと雖も、我が現時の軍制は航空隊をして陸海軍に分属せしめ、未だ其以外に独立するものと為さず。 陸海軍…

小川和久『日本人が知らない集団的自衛権』(文春新書)を読む。①集団的自衛権について考える前に知っておくこと

集団的自衛権とは何であるか、如何なる場合に発動されるのか、或いはそれ自体は日本国憲法に違反するや否や、という議論が昨年盛んに行われた。 私としては、個別的自衛権も発動できなくてどうして集団的自衛権の賛否を論ずるのか理解に苦しんだが、現実には…

明治維新を中学歴史教科書で振り返る ③新政府樹立と祖国統一戦争

1867 大政奉還 王政復古の大号令 1868 戊辰戦争 五箇条の御誓文 1869 版籍奉還 北海道 1870 1871 廃藩置県 解放令 1872 学制 (壬申戸籍) 1873 徴兵令 地租改正 1874 民撰議院設立建白書 屯田兵 1875 1876 1877 西南戦争 明治維新は、徳川慶喜の大政奉還を…

「地政学ブーム」に付いて考えたこと

昨年から、書店には「地政学」を題材とする著書が多く並んでいる。何故「地政学」が流行っているのか。 そもそも地政学とは何なのか。 「安全保障を地理的な環境から論ずるやり方を地政学と言う」(鍛冶俊樹『戦争の常識』) 「地政学は、帝国主義の論理です…

中学歴史教科書で比較する、大化改新と明治維新

白村江の戦い、薩英戦争・下関事件のように、日本の安全保障が脅かされると中央集権化へ向けた力が働く。政治体制を改めるほどの大きな力が。 大化改新によって、都を飛鳥から難波(大阪府)に移した。豪族が支配していた土地と人々を天皇に返し(公地・公民…

明治時代を中学歴史教科書で振り返る ①太字年表(その1)おおよその流れ

太字年表とは、塾講師時代に歴史が苦手な生徒に指導した、教科書の本文(まれに注釈)の太字のみで作る年表をいいます。試みに東京書籍『新編新しい社会 歴史』を参考に作ってみました。 1868 戊辰戦争 五箇条の御誓文 1869 版籍奉還 北海道 1870 1871 廃藩…

日本の歴史区分は、「古代」と「近代」だけでいい。

私の見る所では、日本の歴史区分は「古代」「近代」の二つに分けられる。厳密には1万年続く縄文時代を「前古代」、大東亜戦争以後を「現代」と言えなくもないが、ここでは「中世」「近世」という分け方は必要ない、ということを強調しておきたい。 古代、近…

徴兵制のメリット・デメリット

「徴兵制は社会一般の国防意識や公共精神の普及に極めて有効である。日本では国防意識も公共精神も学校で教えることすらしていないが、諸外国の学校では重要な徳目である。しかし単に学校で教えるだけでは意識は徹底しない。徴兵制はこうした精神面の教育の…

国防の義務と徴兵制、志願兵制の違い

憲法改正で徴兵制が復活する・・・という言説を時折目にする。しかし、そもそも徴兵制とは何なのか、志願兵制とは何が違うのか。 日本国憲法は徴兵制を禁止しているというが、それは本当だろうか。 「国民国家とは・・・国民のための国家という意味である。・・・しか…

【憲法小論 番外編】譲位に反対する理由と、現行法で出来ること

以前、陛下の「生前退位」に反対する理由を書いた。 ichijokanji.hatenablog.com 私は今でも譲位に反対であることに変わりはない。皇位継承に国会が容喙すべきでないこと、しかもそれは皇統断絶を目論む勢力にとって利用すべき「前例」となることが挙げられ…

天皇が「国民」に含まれるかは、「国民」の定義による

私は天皇の「退位」には当然反対であるし、譲位にも反対であることは変わらない。 それとは別の問題として、天皇は「国民」に含まられるや否や、という憲法のテキストで論じられるテーマが、国会でも論じられたようである。 www.sankei.com 国家は国民の団体…

【憲法逐条解説】 第9条 我国はポツダム宣言の求めに従い、戦争を抛棄し、軍備を撤廃した

第二章 戦争の放棄 第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は…

【憲法逐条解説】 第8条 皇室財産の多くは国有化され、国会が監督することとなった

第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。 〔解 説〕皇室財産と国会の権限 旧憲法に於いては、皇室財産及び皇室経費に付いては、国庫より毎年定額の皇室経費を支出することの…

【憲法逐条解説】 第7条 天皇の国事行為の列記事項

第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。 二 国会を召集すること。 三 衆議院を解散すること。 四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。 五 国務大臣及び法…

【憲法逐条解説】 第6条 天皇の任命行為は内閣総理大臣、最高裁長官の地位に重みを与える

第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。 〔解 説〕 天皇の任命行為 (一)内閣総理大臣は国会の議決を以て之を指名するもので、何人を総理大臣たらしむべきかを決…

【憲法逐条解説】 第5条 摂政を置くべき場合と摂政の地位

第五条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。 〔解 説〕摂 政 摂政に関する本条の規定は旧憲法(一七条)と其の趣旨を同じうするもので、(1)摂政は…

【憲法逐条解説】 第4条 天皇の御不例又は海外御旅行の際に国事行為の臨時代行がなされる

第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。 天皇は法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。 〔解 説〕天皇の国事に関する権能、其の権能の委任 (一)旧憲法に於いて天皇に…

【憲法逐条解説】 第3条 天皇の国事行為は、すべて内閣が責任を負う 

第三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。 〔解 説〕天皇の行為に対する内閣の責任 国事に関する天皇の権限は第六条及び第七条の定むる所であるが、天皇が此等の行為を為すには自己の自由意思に依…

【憲法逐条解説】 第2条 皇位は、皇統に属する男系の男子が継承する。

第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。 〔解 説〕皇位の継承 本条は旧憲法第二条と略同様であり、別に解説を要するものも無いが、唯旧憲法に比し重要な大変革として見るべきものは皇室典範の性…

【憲法逐条解説】 第1条 日本国憲法においても天皇は君主の地位を失わない

第一章 天 皇 〔解 説〕新憲法は国民主権主義を取り、天皇はもはや主権を有せられないのであるから、此の点から言ふと、第一章には、国家組織の全体に通ずる総則的規定を除いては、先づ国民に付いて規定するのを当然とするやうであるが、後に述ぶる如く新憲…

【憲法逐条解説】 序説(二、三) 新憲法によっても、国体は変革されていない

二 新憲法と国体の変革 新憲法が我が国体を変革するものであるや否やは、従来一般に我が国体は万古不変であると謂はれてゐただけに殊に議会に於ける憲法草案の審議に際し激しく論議せられた問題であるが、それは「国体」といふ語の意義を如何に定むるかに依…

【憲法逐条解説】 序説(一) 日本国憲法は帝国憲法を廃棄して、新しく制定したものである

序 説 一 新憲法制定の手続 新「日本国憲法」は昭和二十一年十一月三日に公布せられ、公布後六箇月を経て実施せらるることに定められた。即ち二十二年五月三日からは、愈々従来の「大日本帝国憲法」は其の効力を失ひ、新憲法が之に代つて日本国の基礎法とな…