一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

帝国憲法上諭 第一段② 憲法制定の目的

【上諭 第一段】

朕祖宗ノ遺烈ヲ承ケ万世一系ノ帝位ヲ践ミ朕カ親愛スル所ノ臣民ハ即チ朕カ祖宗ノ恵撫慈養シタマヒシ所ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ康福ヲ増進シ其ノ懿徳良能ヲ発達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼賛ニ依リ与ニ倶ニ国家ノ進運ヲ扶持セムコトヲ望ミ乃チ明治十四年十月十二日ノ詔命ヲ履践シ玆ニ大憲ヲ制定シ朕カ率由スル所ヲ示シ朕カ後嗣及臣民及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠ニ循行スル所ヲ知ラシム

 

 

 第二は、憲法制定の目的に関する部分で、それには特に二の事を挙げて、・・・その一は臣民の『康福ヲ増進シ其ノ懿徳良能ヲ発達セシメムコト』の目的であり、その二は臣民の『翼賛ニ依リ与ニ倶ニ国家ノ進運ヲ扶持セムコト』の目的である。・・・即ち憲法の制定に付いて主として目的とせられたところは、第一には国民の幸福を図ることであり、第二には国民の翼賛を開くことである。美濃部達吉『逐条憲法精義』p54)

 

 憲法は国家の統治に付いて基礎法則を定むるもので、而して国家の統治が国民の幸福を目的とするものであるから、憲法の制定も当然に国民の幸福の為にするものでなければならぬ。(同p55)

 統治の大権が御一人又は御一家に属する私権ではなく全国民の幸福の為に存する公権であることを認められたもので、西洋諸国の中世の歴史に現はれたやうな所謂家産国の思想、即ち国家の統治権を以て君主の一個の私権と為し、君主が自己の家産として之を子孫に伝ふるものとするやうな思想が全く排斥せらるべきことは、之に依つても明示せられて居るものと云ふことが出来る。(同同)

 

 憲法の制定により、天皇の統治大権は、国民の幸福を図るために行使されるべきことを明らかにした。元よりわが国は、君民一致の国体であり、中世の西洋諸国に見られたような、国家を以て君主の所有物とする思想とは相容れないが、改めてこれを宣明したのである。

 

 第二点は、国民の翼賛のことに関するもので、即ち国家の統治に関して独り天皇の大権のみに依らず、国民の翼賛に依つて与に倶に国家の進運を扶持すること憲法制定の第二の主たる目的として挙げられて居る。(同p55)

 而して国民の翼賛を求むる手段として設けられたものは、即ち帝国議会であり、議会が国民の代表者として、国民に代つて大権に翼賛するのであるから、玆に国民の翼賛に依り云々とあるのは、即ち議会制度の設立を意味し、間接には議会が国民の代表機関であることを示されたものと云ふことが出来る。(同p56)

 

 国家の統治は、天皇の大権のみによって行うのではない。国民の代表機関である帝国議会の協賛(協力)を得て行う。このように「君主と国民と共同して国家の権力を行つて行くといふのが立憲君主政体の本質(※)である。

 帝国憲法は、立憲的な憲法であることを宣言している。

 

 

 ※ 美濃部達吉憲法講話』(大正7年)p39-40