一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

帝国憲法上諭 第一段④ 天皇の大権は憲法によって定められ、憲法によって制限される

【上諭 第一段】

朕祖宗ノ遺烈ヲ承ケ万世一系ノ帝位ヲ践ミ朕カ親愛スル所ノ臣民ハ即チ朕カ祖宗ノ恵撫慈養シタマヒシ所ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ康福ヲ増進シ其ノ懿徳良能ヲ発達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼賛ニ依リ与ニ倶ニ国家ノ進運ヲ扶持セムコトヲ望ミ乃チ明治十四年十月十二日ノ詔命ヲ履践シ玆ニ大憲ヲ制定シ朕カ率由スル所ヲ示シ朕カ後嗣及臣民及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠ニ循行スル所ヲ知ラシム

 

 第四は、『朕カ率由スル所ヲ示シ』より以下の部分で、憲法が臣民を拘束すると共に一方には天皇御自身も之に従はせたまうべきことを示し、並にその拘束力が明治天皇の御一代に止まらず、その改正せられない限り、永遠に後代にも及ぶべきことを示されて居る。憲法明治天皇の欽定に係るものであるが、併しそれは勿論明治天皇御一代の憲法ではなく大日本帝国憲法であつて、国家の意思として国家と共に永久にその効力を有するものであり、随て又明治天皇崩御の後にも効力を継続すべきことは言ふまでもない。美濃部達吉『逐条憲法精義』p57)

  天皇憲法の上に超然として、憲法を破壊し憲法を無視したまふことの自由を有したまふのではなく、憲法の下に立ち憲法の拘束を受けたまふのである。(同同)

 

 憲法は、国民と共に天皇も遵守すべきものである。憲法は国家の意思であるから、国家存立と共に永久に効力を有し、明治天皇のみならず後嗣の天皇もまたこれを遵守すべきであることは、言を俟たない。

 

 憲法天皇の大権に対する関係は、一面には大権の基礎であり、一面には大権の制限であるといふ二重の性質を有つ。(同p58)

 

 帝国憲法は、今でいう「権限規範」であり「制限規範」である。

 

 天皇の大権は固より憲法に依つて始めて定められたものではなく、憲法以前から既に確定していたものであるが、憲法以前に於いては天皇の大権は専ら歴史的に定まつた不文法にその基礎を有つて居たもので、憲法が既に制定せられた上は、憲法は従来の不文法を改めて成文法としたものであるから、随つて天皇の大権も亦成文法にその基礎を有するものとなつたのである(同同)

 

 憲法は他の総ての成文法規と同様に必ずしも欠陥の無いものではないからその欠陥の証明し得らるゝ限りは、憲法以外に於いても不文法上の大権(就中祭祀大権はその著しい例として挙げることが出来る)を認めねばならぬけれども、それは憲法の欠陥に基くもので、その欠陥を認むる為には、歴史的に定まつて居る慣習法又はその他憲法の正文に代るだけの根拠を求めねばならぬ。然らざる限りは、天皇の大権は憲法の根拠に基いてのみ行はれ得るもので、憲法以外の大権は存在し得ないものである。(同同)

 

 第二に憲法は大権の制限を為すもので、それは大権が憲法に従つて行はれねばならぬことから生ずる当然の性質である。それは又次に述ぶる第二段に於いても更に繰返し言明せられて居るところで、即ち『朕及朕カ子孫ハ将来此ノ憲法ノ条章ニ循ヒ之ヲ行フコト愆ラサルヘシ』と宣たまはせて居る。憲法の条章に循はせたまうことが要件となつて居る以上は、憲法が大権を制限するものと言はねばならぬことは、当然である。(同p58-59)

 

 天皇の大権は、原則として、憲法によって定められ、憲法によって制限される。