一条寛治のブログ

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帝国憲法上諭 第五段 憲法改正の方法

【第五段】

将来若此ノ憲法ノ或ル条章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕及朕カ継統ノ子孫ハ発議ノ権ヲ執リ之ヲ議会ニ付シ議会ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ

 

 

 第五段は憲法改正の方法に関するもので、それは憲法の本文に於いても第七十三条に規定せられて居るところであり、その詳細の説明は同条の解説に譲るが、唯此の上諭の中には二の点に特に注意すべき字句が加へられて居る。

 その一は『将来若此ノ憲法ノ或ル条章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ』とあつて、特に『或ル条章』と限られて居ることに在る。それは憲法の全部の廃止又は停止を容認しないことの趣意を含んで居るもので、仮令憲法の改正を行ふとしてもそれは唯或る条項の改正にのみ止まらねばならぬ憲法の全部の廃止又は停止は国家存立の基礎を根本的に覆へすもので、それは許され得べきものではないのである美濃部達吉『逐条憲法精義』p62-63)

 

 憲法改正には限界があり、全面改正や廃止することは認められない。具体的には、法律的意味の国体、すなわち、万世一系の天皇統治権を総攬し給う体制を否定することは許されない。ただし、日本国憲法によって、この意味の国体は変更された。

 

 その二は正規の手続を経て議会が議決する場合の外は『朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ』と特に明言せられて居ることである。憲法上定められた方法を以て、憲法を改正する以外に於いて、憲法を破壊することは、それが国民の側から起つたにもせよ、政府の側から起つたにもせよ、常に不法の暴力であつて、固より憲法上正当の行為として許され得べきものではない。国民の側から不法に憲法を破壊する行為を革命と謂ひ、現に政権を有する者の側から不法に憲法を破壊する行為を「クーデター」と謂ふ。上諭に『敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ』とあるのは、即ち革命及び「クーデター」を許すべからざる不法の行為として宣言せられたものに外ならぬ。

 旧時の誤つた主権説に囚はれた学説は、往々主権を以て何者にも拘束せられない無制限な権力となし、随つて主権者は憲法にも拘束せられず、何時でも憲法を破壊し得るものと為すものが有るが、此の上諭は断乎として此の如き謬説を排斥せられたものである。(同p63)

 

 もちろん「正当な方法を以て憲法を改正すべきことの必要を評論することは、固より正当な言論の自由の範囲に属するもので(同同)ある。