一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

日本国憲法前文 第一段② 新憲法制定の理由

【第一段前半】

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。

  

 

 前文には新憲法の理由を説明して『諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民の存することを宣言し、この憲法を確定する』と曰つて居る。即ち平和と自由との恵沢を永久に確保し、戦争の惨禍を再びせざることを以て、新憲法の制定及び国民主権主義宣言の目的として声明して居るのである。而も平和と自由とを確保することは結局戦争を起さないことに外ならないのであるから、新憲法の制定は再び戦争を起さないやうにすることを其の唯一最高の目的とすることがこれにより声明せられて居るものと謂ふことが出来る。美濃部達吉『新憲法逐条解説』p10-11)

 

 国家には戦争をする権利、すなわち交戦権が認められているが、わが国は戦争を起こさないこと、すなわち交戦権の放棄を憲法制定の「唯一最高の目的」としている。

 

 何故に戦争の惨禍を避ける為に、国民主権と新憲法の制定とを必要とするのであるか。其の理由は明白である。即ち新憲法の制定者は、過去に於いて日本を戦争に導いた最も大なる原因は旧憲法の欠陥に在るとして居るのであつて、憲法天皇が統治の全権を総攬するものとして居る結果、天皇を擁する側近の権臣は天皇の名を仮りて大政を擅にし、国民の正しい意思に反して日本を侵略戦争に導くに至つたもので、此の禍を除く為には、天皇統治権を総攬するの制を廃して、主権が国民に存するの制を確立せねばならぬといふに在る。 

 斯かる考へ方が正しきや否やは別問題として、兎も角斯かる思想が新憲法制定の基礎理由を為して居ることは疑を容れない所で、前文は此の趣意を声明して居るのである。(同p11)

 

 天皇統治権を総攬することと、輔弼の任に当たる国務大臣が判断を誤ることは別問題である。いわゆる翼賛選挙(昭和17年)において、翼賛会推薦の候補が全議席の8割以上を占め、戦争の継続が必ずしも民意に背いていたとは言い切れない。

 交戦権の否定は、国家存立の否定と同義である。ならば、日本国憲法の制定者は、日本が国家ではない形で存立することを望んでいたのではないか。国民主権とは名ばかりで、連合国の利益のために制定されたのではないか、と疑わざるを得ない。