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一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

日本国憲法前文 第一段④ 新憲法の国民主権主義② 国民主権の思想

帝国憲法と日本国憲法

【第一段後半】

 そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を廃除する。

 

 

 国民主権主義の原理は、之を「人類普遍の原理」であるとして宣言して居るのであるが、斯かる思想は、社会契約説に基く自然法原理として、十八世紀の米国独立戦争や仏国革命を支配した思想で、・・・それに拠れば、主権が国民に属することは、各国の政体の問題ではなく、世界の総ての国に共通な必然の原理であるとするのである。

 我が新憲法は此の点に於いて之と同様な自然法的原理を真理として承認し、総て国の政治は何人が其の局に当るにもせよ、国民からの崇高な信託であつて、国民に淵源する国民の政治であり、国民を代表して国民の福利の為に之を行ふものであることが人類普遍の原理であり、憲法は此の原理を其の根本思想と為すものであることを宣言して居るのである。それは哲理的観念の声明であるが、それに依り新憲法が旧憲法とは全然其の思想的根柢を異にすることを明らかにして居るもので、憲法は此の原理に反するものであるから、全面的に之を廃して新憲法を以て之に代ふると共に、他の一切の詔勅及び法令の此の原理に反するものも亦之を排除すべきものとして居るのである美濃部達吉『新憲法逐条解説』p14-15)

 

 帝国憲法は「人類普遍の原理」に反するために全面的に廃棄され、ポツダム宣言の受諾によって主権者となった国民が、新憲法を制定した。

 

 新憲法は此の如く国民主権を以て人類普遍の原理であるとして宣言して居るのであるから、此の原理に従へば、旧憲法に於ける天皇の統治大権も結局は国民の意思にその根拠を有するものであり、皇祖皇宗以来の歴代天皇の権威も亦一に国民から発せらるものとならねばならぬ。

 社会契約説それ自身は到底正当の根拠あるものとは認め難いが、憲法が其の窮極の根拠を国民心理に有すとする思想は正当であつて、我が歴代の天皇の権威も結局は国民が君主として奉載することに其の最終の根拠を有するものと認むべく、国政の権威が国民に由来することを人類普遍の原理であるとすることは、正当として認めねばならぬ。(同p15-16)

 

 皇位は万世一系の血統に基くものであるが、その権威の根拠は国民心理であるとする。帝国憲法における天皇の統治大権も、日本国憲法における国会中心主義も、「国政の権威が国民に由来すること」を根拠にしている。