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国家とは何だろうか

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

【憲法小論 番外編】私が「生前退位」に反対する理由

憲法小論

 去る8月8日になされた今上陛下の「ビデオメッセージ」を受け、世論のおよそ9割は「生前退位」に賛成し、政府もこれをを認めるべく、特別立法の制定に向けて動いているようである。

 

 しかし、そもそも「生前退位」とは何なのか。

 「生前」とは、生きている間にという意味である。「退位」とは、位を退くことで、これには譲位と廃位が考えられる。

 単に「生前退位」が譲位を指すとすれば、歴史上何度もなされていることであるから、あえて造語を用いる必要はない。したがって、廃位の意味を含ませてこの造語を用いているのではないか、と勘繰らざるを得ない。

 

 現行法では、帝国憲法と同時に発布された旧皇室典範と同じく、譲位は認められていない。

 

 第一に、皇室典範が譲位を認めていない理由は、皇位継承を世俗の政治から遠ざけるためであり、皇室の安寧を守るためである。

 天皇は、臣下の政争のために譲位を迫られ、あるいは時の政権に抗議するため、または上皇として権勢を振るうために譲位をし、結果として皇統の分裂即ち国家分裂の事態を招くこともあった。

 従って、皇位の政治利用から天皇・皇室を守り、国家の一体性を保つために皇室典範を制定し、皇位継承の原因とその順位を予め確定させることとしたのである。

 

 第二に、御公務の軽減のためという理由は、国事行為の臨時代理である程度解消できる。

 天皇は法律的には国家元首であるが、日本文化に於ては祭主である。

 国家元首としての法律行為(国事行為)と祭主として祭祀(儀式)を行うこととでは、どちらが本来の天皇の御姿であろうか。

 国事行為や御公務は皇太子殿下や他の皇族方に臨時代理としてお務め頂き、 陛下には祭主としてのお務めに専念して頂くのが、今出来る最善の道ではないだろうか。

 そしてもし祭主としてのお務めが適わなくなるに至ったならば、皇太子殿下に摂政として天皇を代表して頂くのが良いのではないかと愚考する。

 

 第三に、皇位継承に国会が容喙することに反対である。

 皇室典範を制定した理由は、皇位継承について何人の介入をも許さず、皇位の政治利用から天皇・皇室を守るためであった。

 「生前退位」を容認する特別立法なるものは、この趣意を完全に無に帰せしむるものである。

 特別立法による譲位の容認は、国会が譲位を認める前例となり、その権限を持つものと解釈され得る。

 以下のことは憚るべきであるが、あえて書く。

 国会が、皇位継承権者がいなくなるまで特別立法を以て譲位を迫り、その上で「女性天皇」「女系天皇」已む無しという世論を作り、これを法制化する。つまり、民意によって皇統を断絶させ、天皇を廃止することさえ可能となるのである。

 特別立法による「生前退位容認は、皇統断絶すなわち日本滅亡への足掛かりとなり得る、これが反対する最大の理由である。

 

 第四に、陛下の思召しであるから、そのようにすべしという理由には賛同できない。

 それは天皇親政を支持する戦前の右翼と変わらず、立憲君主政体の思想に反する。

 また、御高齢であられるから御公務を軽減すべきであるという意見には、第二の理由を以て反対する。

 

 では、事実として「お気持ち」を表明された上では、一体どうすればよいのか。 

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