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国家とは何だろうか

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

【憲法逐条解説】 序/補訂について

『新憲法逐条解説』補訂

         

 

 本年五月三日から愈々実施を見るに至らんとする「日本国憲法」は、我が国家組織の上に我が国歴史あつて以来未曾有ともいふべき大改革を加ふるものである。其の改革の殊に著しいものとしては、旧憲法に於ける我が伝統的な君主主権主義を捨てて国民主権主義を基調と為し、至尊としての天皇の制は尚存置したけれども、天皇の統治大権は殆ど総てを撤廃して之を国民の権能たらしめたこと、我が建国以来殊に武家政治以後常に国政の基礎を為して居た尚武の国風を排して、総ての軍備を撤廃し戦争を抛棄して絶対の平和主義を永遠の国是と為すに至つたこと、自然法に基づく人類普遍の原理を承認して、国の政治も此の普遍の原理に従はねばならぬものと為し、以て圧制的な国権万能の思想を排斥するに至つたこと等を挙げることが出来る。此等の改革はそれが根本的の大改革であるだけに、其の趣旨を完全に実現せしむる為には、全国民の努力が必要であり、而してそれには憲法に関する健全な知識を一般に普及することが、当然の前提と為らねばならぬ。

 本書は右の目的を達する為の一助ともなるべき希望を以て起草し上梓するに至つたもので、初め「法律時報」の昭和二十一年十一月号以下四号に亙り連載せられたのに多少の補正を加へたものである。其の趣旨とする所は綿密な学問上の研究を目的とするよりは、寧ろ平易簡明に憲法各条の趣旨を解説しようとするに在る。其の脱稿後の印刷に付した当時は新皇室典範を初め憲法附属法律の未だ制定せられなかつた時で、それ等の諸法律の既に公布せられた現在となつては修正を要する箇所は少くないが、既に印刷に著手した後であつた為に、必要な修正も加ふるに由なく其の儘公にするに至つたことは、読者の諒恕を請ふの外は無い。

 

 昭和二十二年四月天長節の日

                             美濃部達吉

 

 

 補訂に付いて

 古字・旧字体を新字体に改める外は、本文には一切手を付けず、註(※印)を以て補充説明を附することとした。

 普段のブログ記事では引用部を太字にしているが、【憲法逐条解説】ではすべて美濃部達吉著『新憲法逐条解説』をそのまま引用し記事にするため細字のままとし、特に「ここから引用」などとはしない。

                             一条寛治