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国家とは何だろうか

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

【憲法逐条解説】 第4条 天皇の御不例又は海外御旅行の際に国事行為の臨時代行がなされる

『新憲法逐条解説』補訂

   第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。

    天皇は法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

 

 〔解 説天皇の国事に関する権能、其の権能の委任

 (一)旧憲法に於いて天皇に属するものとせられてゐた国家統治の大権は、新憲法に於いては殆ど全部が天皇から取り除かれ、天皇は国事に関して僅に特に列記せられた数個の行為を行ふに止まるものとせられた。殊に国の政治に関する権限は全く之を有しないものと定められて居る。例へば内閣総理大臣を任命することは天皇の権限に属するのであるが、天皇の為される行為は、総理大臣となるべき人が既に決定した後に、親任式を行ひ其の人に任命の辞令を交付するといふ形式的な行為にのみ限られ、何人を総理大臣たらしむべきかは事政治に関するもので、天皇は全く之に関与せず、一に内閣の決する所に依るのであつて、天皇は内閣に対し意見を述ぶる権限をも有せられないのである。要するに、天皇は国の政治に対しては政争の外に超然として全く不関与の地位に立たせらるるのである。如何なる国の大事を決すべき閣議であつても、新憲法の下に於いては、御前会議の開かるるが如きことは憲法上思考し得られない。

 

 要するに、本条第一項に「国事」と「国政」とを区別して規定して居るのは、「国事」とは政治的効果を有しない形式的の事項のみを指す意義に用ゐられて居るのに対し、「国政」とは新なる国家意思の決定の如き政治的意義を有する行為を指すものと解すべきである。

 

 (二)国事に関する天皇の行為は特に列記せられた数個の行為に限るのであるから、之を他の者に委任することは、旧憲法に於ける天皇の大権の如くには、其の必要を見ないのであるが、尚天皇の御不例の際又は海外御旅行の際の如く特に其の必要を生ずることも思考し得べき所で、因つて第二項に於いて天皇は法律の定むる所に依り其の行為を委任し得べきことを定めて居る※1

 

 如何なる場合に其の委任が許さるるか、それは全部委任であるや一部委任であるや、其の委任の手続用件は如何等、総て法律の定むる所に依るべきであるが、恐らくは異常の御故障の場合に於ける全部委任のみが認められるのではなからうかと推測せられる※2

 

 

 ※1 これに従い、国事行為の臨時代行に関する法律(昭和三九年五月二〇日、法八三)が制定された。

 ※2 同法第二条第一項には「天皇は、精神若しくは身体の疾患又は事故があるときは、摂政を置くべき場合を除き、内閣の助言と承認により、国事に関する行為を・・・摂政となる順位にあたる皇族に委任して臨時に代行させることができる」とある。

 平成以降は、「天皇の御不例の際又は海外御旅行の際」に皇太子殿下が国事行為の臨時代行をなされ、その内容はすべて「全部委任」であった。