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一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

【憲法逐条解説】 第5条 摂政を置くべき場合と摂政の地位

『新憲法逐条解説』補訂

   第五条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。

 

 〔解 説摂  政

 摂政に関する本条の規定は旧憲法(一七条)と其の趣旨を同じうするもので、(1)摂政天皇の名に於いて天皇に属する権限を行ふものであること※1、(2)摂政を置くべき場合、摂政となるべき資格及び順序は皇室典範の定むる所に依ることは、共に旧憲法と全く同様である※2天皇は国政に関する権能を有せず随つて摂政は国政を摂行する者ではないから、「摂政」の名称は不穏当のやうであるが、伝統の歴史的の称号であり、之に代はるべき適当の名も得難いので、暫く旧名を襲用したものと推測せられる。即ち「摂政」の政は第四条第一項の「国政」の政とは其の意義を異にし、国政を含まず専ら国事に関する行為のみの意義に解せねばならぬ。

 

 但本条には特に此の場合には前条第一項の規定を準用することを定めて居り、即ち摂政は国の政治に関しては天皇と等しく不関与の地位に在らねばならぬのである。第一項のみを準用し第二項は準用せられないのであるから、摂政が其の権限を更に他の者に委任することは許されない所で、若し其の必要を生じたならば、其の場合は摂政の順序を変更するを要するものと解せねばならぬ※3

 摂政の一身上の栄誉権に付いても、天皇に関する規定の準用なく、随つて摂政は国家及び国民統合の象徴たる地位に在るものではない。

 

 

 ※1 『天皇の名で』とは、天皇の代表機関として天皇に代わってその権限を行うことを意味し、摂政の行為が法律上天皇が親ら行ったのと同一の効果を生ずる。

 また、摂政は国事行為の臨時代行のような委任行為ではなく、皇室典範の定めに従い当然に天皇を代表する、法定代表機関である。

 ※2 摂政を置くべき場合は、天皇が成年に達しないとき(皇室典範一六条第一項)、天皇が精神若しくは身体の重患又は重大な事故(御故障)により国事行為を親らすることが出来ない場合で、皇室会議の議決があったとき(同第二項)である。

 摂政となるべき資格は、ただ皇族であることのみで、その順序は成年に達した皇太子又は皇太孫(第一七条第一項第一号)、親王及び王(同第二号)となり、成年に達した皇族男子が一人も在さないときは、同第三号乃至第六号に従い皇族女子が摂政となる。

 摂政は、天皇崩御したとき、成年に達したとき、御故障が除かれたことが確認され皇室会議の議決を経たときに、廃止される。

 ※3 摂政に御故障あるときは、皇室典範の議により、摂政を変えることが出来る(同第一八条)。なお、摂政が海外御旅行の際には、国事行為の臨時代行をすることが認められると考えられる。

 

 本文は美濃部達吉著『新憲法逐条解説』、註は引用者(一条)による。

 引用は古字、旧字を新字体に改めた外は原文のまま。