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一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

【憲法逐条解説】 第6条 天皇の任命行為は内閣総理大臣、最高裁長官の地位に重みを与える

   第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。

    天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

 

 〔解 説〕 天皇の任命行為

 (一)内閣総理大臣は国会の議決を以て之を指名するもので、何人を総理大臣たらしむべきかを決定するに付いては、天皇には何等の権限も無いのであるが、国会の議決に依り其の人が決定せられた上は、其の人の承諾を得た後、内閣を経て天皇に上奏し、天皇は之に対し拒否権も無ければ承認権も無く、其の奏請に基き直に其の人を総理大臣に任命せねばならぬのである。総理大臣は行政部の首長であるから、其の上に立つて之を任命するのは、形式だけでも天皇に之を求むるの外なく、因つて形式上天皇の行為として之を任命するものとせられて居るのである※1天皇の任命に係るとは言へ、旧憲法に於ける国務大臣の任命とは異なり、単に形式上の手続に過ぎないのであるから、内閣総理大臣はそれに依り天皇の官吏となるものではなく、天皇から其の権限を委任せらるるのでもない。其の権限は直接に憲法に依つて与へられたものであることは言ふまでもない。

 

 (二)本条第二項は衆議院の修正に依り追加せられたもので、政府の原案には、最高裁判所の長たる裁判官も他の裁判官と等しく内閣が任命するものとせられてゐたが、衆議院の修正に依り最高裁判所の長たる裁判官のみは、他の裁判官と異なり、内閣の指名に基き、内閣総理大臣と同じく、形式上天皇の行為として之を任命するものとせられたのである※2。司法部の首長たるものであるから、内閣に於いて任命するものと為さず、特に形式上天皇の行為たらしめたのであらうと思考せられる。

 

 行政も司法も新憲法に於いては天皇から独立し、天皇は実質的に之に関する何等の権限をも有せられないのであるが、両者の首長が形式上天皇の任命する所たることに依り、天皇は恰も行政部及び司法部の上に立つ者の如き外形を為さしむるのが其の趣旨の存する所と思はれる。

 

 

 ※1 この形式を備えることによって「内閣の首長としての権威を重からしめようとするのである」美濃部達吉日本国憲法原論』p241)

 ※2 内閣総理大臣の任命と同様、「以て其の権威を重からし」(同同)めようとするのである。