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一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

潮匡人『常識としての軍事学』(中公新書ラクレ)を読む。③外交官の特権と大使館

 各国の大使館や領事館、外交官にはどのような権限が認められているのだろうか。

 

常識としての軍事学 (中公新書ラクレ)

常識としての軍事学 (中公新書ラクレ)

 

 

 

 

 「各国とも自国諜報機関の要員を外交官として赴任させている。その結果、各国大使館は「秘密スパイ組織」と化す。その実態は冷戦後の今なお変わっていない」(p130)

 

 「くどいようですが、以上は世界の常識です。それが日本の常識となっていないのは、主要国の中で、ひとり日本だけが同様の行為を自粛しているからでしょう。あるいは、日本が諜報機関を持たない、世界に類例を見ない大国だからと言い換えてもよいでしょう」(同)

 

 大使館、領事館を置くということは、国交があることを意味する。同書では、日朝国交正常化がなった場合に、北朝鮮が日本国内で何ができるのかを説明している。

 

 「仮に将来、日本と北朝鮮との間で「国交正常化」が実現すれば、いったい何がどう変わるのでしょうか」(p131)

 「国交「正常化」が実現した暁には、平壌日本大使館が開設される(であろう)ということです。このことは同時に以下の問題をはらんでいます。すなわち、皇居を擁する東京都千代田区や六本木ヒルズで賑わう港区など都内の一等地に「朝鮮民主主義人民共和国」の看板と国旗を掲げた北朝鮮の大使館が設置されるということです。東京だけではありません。大阪や名古屋といった大都市に「朝鮮民主主義人民共和国」の領事館が設置されるはずです」(同)

 

 「以上がもたらす結果が何か。・・・北朝鮮の大使館や領事館は一〇〇パーセント、彼らの違法な工作活動の拠点となる。女子中学生を含む善良無垢な日本人を突然、袋詰めにして拉致する行為に疑問すら感じない連中が、そこで白昼堂々、勤務する。そして不逮捕特権や不可侵権に守られながら、諜報活動や工作活動を繰り広げる」(p132)

 

 それは北朝鮮に限らず、「特定秘密」を保持しているであろう公務員を拉致監禁し、自殺に見せかけて殺すことは考えられる。

 

 「日本政府(外務省)が受け入れに同意した鍵括弧つきの「外交官」が享受できる権限は不逮捕特権に留まりません。外交使節団に認められる不可侵権は外交官の身体から、使節団の公館公邸、さらには使節団の文書にも及んでいます。ですから例えば、警視庁公安部外事課職員が北朝鮮「外交官」の文書を捜索したり、押収したりすることは法的に許されません

 外交使節団には「通信の自由」も認められています。その結果、たとえ実態が工作員であろうと、外交官として赴任している以上、彼らが日本国内に持ち込む「外交封印袋」を公安警察官らが「開く」ことはもちろん、「留置」することもできません。彼らが、その袋の中に穏当な外交文書だけを入れると期待するのは、あまりに楽観的かつ幼稚な推論です。

 この特権を認めた外交関係に関するウィーン条約二七条はこうも規定しています。

 「接受国は、すべての公の目的のためにする使節団の自由な通信を許し、かつ、これを保護しなければならない。使節団は、自国の政府並びに、いずれの場所にあるかを問わず、自国の他の使節団及び領事館と通信するにあたり、外交伝書使及び暗号又は符号による通信文を含むすべての適当な手段を用いることができる」

 右の「接受国」は、この場合、日本。「使節団」が北朝鮮。つまり、北朝鮮使節団は国際法上の保護の下、まさに白昼堂々「暗号」で交信できるわけです。公安警察自衛隊が、それらを傍受し解読することも自由ですが、暗号の使用自体を禁止することは許されません。同様に、外交官には「旅行の自由」も認められています。ゆえに、工作船の着眼ポイントを探る目的で日本海側を「旅行」することも自由です。

 そのほか、刑事裁判権も免除されます。つまり司法上の処罰ができません。同様に、民事裁判権も免除されているため、不法行為があっても、訴訟を提起することすらできません。細かいことを言えば、そもそも警察権が免除されているため、最大限なし得る処分は現行犯逮捕に伴う一時的な拘束だけ。平たく言えば、治外法権です。実際、古い国際法の教科書には「治外法権」と書いてありました。

 我々日本国民にとってはウィーン条約第三四条の規定も見過ごせません。

 「外交官は(中略)人、動産又は不動産に関し、国又は地方公共団体のすべての賦課金及び租税を免除される」

 したがって現在、東京都などが実施している朝鮮総連関連の施設への課税と同様の措置を北朝鮮外交使節団にとることはできません。さらに租税と同様、関税も免除されています。

 要するに、外交使節団を派遣する側にとってみれば、やりたい放題の状況が生まれるわけです。だからこそ、各国は諜報機関の要員を外交官として送り込むのだと言い換えてもよいでしょう」(p133-135)

 

 我国に大使館を置くアメリカ、ロシア、中共が引用文にあるような行為をしていないとは思えない。もちろん、その他の国々もまたスパイの巣窟であり、対日工作の拠点としているとみて間違いない。「平和を愛する諸国民」など何処にも居ないのだ。

 翻って我国は、工作活動の「こ」の字もしているのだろうか。