一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

徴兵制のメリット・デメリット

(最終更新日:2017/12/4)

 

 徴兵制のメリット

 

 徴兵制の最大の利点は人件費が安く抑えられることである。兵隊は基地や駐屯地に起居し食事をし、服装は支給される軍服で統一されているわけだから、衣食住はただである。しかも徴兵対象者は主に結婚前の若者であるから、それほど高い給与を払う必要がない。

 志願兵制の国でも、給与は一般公務員と較べて抑えめではあるが、意欲を喪失させないためにはどうしても、ある程度の額は払わねばならない。徴兵制であれば全員一律の義務であるから、こうした気遣いをせずにすむ。軍隊は大規模組織であるから、人件費の高騰は国防費を押し上げる重要な問題なのである。(鍛冶俊樹『戦争の常識』p89-90)

 

 また徴兵制は社会一般の国防意識や公共精神の普及に極めて有効である。日本では国防意識も公共精神も学校で教えることすらしていないが、諸外国の学校では重要な徳目である。しかし単に学校で教えるだけでは意識は徹底しない。徴兵制はこうした精神面の教育の側面がある。そしてこれは具体的には市民防衛、経済防衛、情報防衛、思想防衛、文化防衛に有効に作用するのである(同p90)

 

 これと関連することだが、事故や災害時などの緊急対処の訓練としても有効である。日本などでも災害を想定した訓練が行われるようになったが、市民全体が参加した訓練など、なかなか出来るものではない。徴兵制があれば救護法や避難方法、誘導、連絡などを若者にまとめて訓練できるのである(同同)

 

 

 徴兵制のデメリット

 

 実は現代においては軍は必ずしも徴兵制を望んではいないのである(同p91)

 

 20世紀には飛行機、戦艦、潜水艦、戦車などが戦争の主役となった。これらの武器は操作にも整備にも専門的な技術を必要とし、一時的に徴兵された兵隊では習熟が困難なのである。

 現に第一次世界大戦後には欧州では一部の革新的な軍人たちが「軍隊の機械化、軍人の職業化」を主張し始める。つまり戦争に勝つには新兵器を大幅に導入する必要があり、そうなると一任限りの徴兵ではもはや間に合わない。軍人を一生の職業として志願する兵隊が必要なのだ(同p92)

  

 徴兵された兵隊は主に歩兵になったものだが、今やその歩兵ですらハイテク機器を扱わなければならない。19世紀には数ヶ月の訓練で兵隊は一人前になった。現在では1年前後を必要とする。先進国の兵役期間は大体1年ぐらいであるから、訓練だけで終わってしまい実任務に就く余裕がない。徴兵制が軍に有り難がられない所以である。(同p93)

 

 

 予備役制度

 

 ついでに予備役についても記しておきたい。

 

 予備役とはもともと徴兵制と深い関係がある。一定の徴兵期間(大体2年前後)を過ぎると除隊して社会復帰することになるが、そこで予備役に編入される場合がある。編入されると一般社会にありながら年に2週間程度の軍事訓練を受け、緊急事態には即座に召集され軍務に服する(鍛冶俊樹『国防の常識』p72)

 

 予備役制度は即座に大量の人員を動員するのに便利なのである。(同同)

 

 従って、自然災害や暴動が起こった際に緊急召集されることがある。

 

  

 ▼引用図書 

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