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一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

鍛冶俊樹『戦争の常識』(文春新書)を読む。⑩国防の義務と、徴兵制のメリット・デメリット

 国家は国民の団体であるから、国民は国家を支える義務がある。具体的には国家の経済力と防衛力は国民の負担によってのみ支えられる。従って国民は納税義務、兵役義務を負わなければならない。

 勿論「兵役義務」といっても、総て国民が銃を担いで、或いは戦闘機に乗って戦場へ行くということではない。戦争に協力する義務、国防の義務と言ってよい。

 

戦争の常識 (文春新書)

戦争の常識 (文春新書)

 

 

 「国民国家とは・・・国民のための国家という意味である。・・・しからば国民国家においては国民が自らの国家を守るために武器を取るのは当然の義務と考えられる」(p87-88)

 「つまり国民国家では国防は納税と同じように国民の義務と考えられており、それは徴兵制、志願兵制に関係がない」(p88)

 

 日本は国民国家ではない。「日本国憲法徴兵制を否定していない」という言説を聞いたことがない。「徴兵制は絶対ありえない」という政党に政権担当能力があるか疑わしい。

 

 「もちろん、兵隊になることだけが国防の義務を果たすことではない。国防とは総合防衛であって、経済でも情報でも文化で防衛に協力することが義務を果たすことになる。従って強制的に兵隊に取ることはしないと言うのが志願兵制の趣旨である」(同)

 「国防は国民の義務とする考え方は独立として至極、当然だと言える。なぜなら国家の防衛を暴力団に委ねるならば、その国は暴力団のものであり、もはや国民のものではない。もしそれを外国に委ねるならば、その国は最早独立国とは言えない」(同)

 

 日本国は一体誰のものだろうか。

 

 「徴兵だからと言って、誰も彼も兵隊に取るわけではない。日本でも徴兵制は実施されていたが、そこには徴兵猶予という措置があった。昭和初期すなわち1925年から1935年ぐらいまでは軍縮期でもあり、諸事情を考慮して徴兵されない場合が多かった。学生まで徴兵するようになったのは太平洋戦争中盤の1943年からである。

 米国でも学生は徴兵免除だったし、学生以外でも諸事情で徴兵免除となる例が多かった。また現在の各国では、選択的徴兵制と言って、徴兵対象者の中から当人の希望や技能その他の事情を考慮して徴兵する場合も少なくない。こうなると志願兵制と大差ないことになる」(p89)

 

 「徴兵制の最大の利点は人件費が安く抑えられることである」(同)

 「軍隊は大規模組織であるから、人件費の高騰は国防費を押し上げる重要な問題なのである」(p90)

 

 私はむしろ第二の点に注目したい。

 

 「また徴兵制は社会一般の国防意識や公共精神の普及に極めて有効である。日本では国防意識も公共精神も学校で教えることすらしていないが、諸外国の学校では重要な徳目である。しかし単に学校で教えるだけでは意識は徹底しない。徴兵制はこうした精神面の教育の側面がある。そしてこれは具体的には市民防衛、経済防衛、情報防衛、思想防衛、文化防衛に有効に作用するのである」(p90)

 

 第一次世界大戦以降、 戦争は軍隊だけで行うのではなく「国家総力戦」となり、国民も無関係ではなくなった。例えば、爆撃機が都市を空爆すれば市民は警察、消防と協力して身を守らなければならない(市民防衛)。特に現在の日本では「歴史戦」として思想、文化が攻撃されている。慰安婦問題、女系天皇問題がそれである。

 

 「これと関連することだが、事故や災害時などの緊急対処の訓練としても有効である。・・・徴兵制があれば救護法や避難方法、誘導、連絡などを若者にまとめて訓練できるのである」(同)

 

 自然災害の多い我国では、自衛隊がレスキュー隊としての仕事に多くの人員を割かなくても済むように、「救護法や避難方法、誘導、連絡などを若者にまとめて訓練」させ、即応予備自衛官に登録して災害時に活躍してもらう、という制度もあっていいだろう。

 しかし徴兵制にはメリットばかりではなく、デメリットも存在する。

 

 「実は現代においては軍は必ずしも徴兵制を望んではいないのである」(p91)

 「20世紀には飛行機、戦艦、潜水艦、戦車などが戦争の主役となった。これらの武器は操作にも整備にも専門的な技術を必要とし、一時的に徴兵された兵隊では習熟が困難なのである。

 現に第一次世界大戦後には欧州では一部の革新的な軍人達が「軍隊の機械化、軍人の職業化」を主張し始める。つまり戦争に勝つには新兵器を大幅に導入する必要があり、そうなると一任期限りの徴兵ではもはや間に合わない。軍人を一生の職業として志願する兵隊が必要なのだ」(p92)

 

 かつて徴兵された兵隊は銃が扱えれば充分であったが、今や歩兵であってもハイテク機器を操るのである。訓練だけで兵役期間を終えてしまい、実任務に就く余裕がないという。それならば職業軍人の数を増やすしかない。