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一条寛治のブログ

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

鍛冶俊樹『戦争の常識』(文春新書)を読む。⑪現代の戦争(弾道ミサイルと核)

 北朝鮮が核実験をして小型化を目指し、弾道ミサイルの精度を上げようとしている。中国(引用部分以外は以下、中共)は現に核保有国で、何百発もの弾道ミサイルを日本に向けている。

 

戦争の常識 (文春新書)

戦争の常識 (文春新書)

 

 

 「弾道ミサイルの中で最も長射程のものを大陸間弾道ミサイルICBMという 。大体5500km以上の射程であり、ユーラシア大陸とアメリカ大陸をまたげることから、大陸間と言うわけだ。つまり米国はロシアや中国を狙えるし、ロ中も米国に狙いを定めて互いににらみ合っていることを意味する」(p178)

 

 あえて言うなら、米国は本土から日本を狙うことも出来る。

 

 「ICMBは一般に長距離弾道ミサイルと考えられているから、それより射程の短い弾道ミサイルを中距離ミサイル(IRBM)、更に短い射程のものを短距離弾道ミサイル(SRBM)と分類する」(p180)

 

 IRBMでは、中共の東風21号の射程が1800km、北朝鮮のノドンは射程が1300kmで、いずれも日本を完全に射程に収めている。

 SRBMでは、中共のM9が台湾を、北朝鮮スカッドが韓国を、それぞれ射程に収めている。

 

 「弾道ミサイルを固形燃料型にして、更に移動式にしたとしてもなお、敵に発見され爆破される可能性は残る。しかしこれを原子力潜水艦に搭載すると、発見は極めて難しくなる。原潜はきわめて長期間の潜航が可能である。従って いったん潜水したら最後、飛行機や人工衛星からも察知は難しいのだ。

 この潜水艦発射型弾道ミサイルをSLBMと言い、これを搭載している原潜を戦略原子力潜水艦と言う」(p182)

 

 ロシアが千島樺太を日本に返さない理由は、戦略原子力潜水艦のためのオホーツク海を日本に侵されたくないからである。

 

 では、これらの弾道ミサイルからどのように国土を守るのか、一つにはミサイル防衛がある。

 

 「PAC3にしろS300Pにしろ、これだけでは所詮、地対空ミサイルに過ぎない。短距離弾道ミサイルなら何とか対応は出来る。

 しかし中距離弾道ミサイルとなると飛距離が伸びる分だけ、対処しなければならない範囲が拡がる。しかも到達高度も大気圏外まで達するため、立体次元で範囲が拡がるのである。また到達高度が高いだけ落下速度も速くなり、迎撃は一層困難になる。

 これに対処するためには多種多様なレーダーで敵ミサイルの早期発見に努めなければならない。つまり数多くのレーダーと迎撃ミサイルとが連携したシステムが必要となる」(p189)

 

 そこで「米国が提案したのは戦域ミサイル防衛システムいわゆるTMDである」(同)

 

 「TMDでは迎撃ミサイルが低空用と高高度用に階層的に分かれており、更にそれぞれ陸上配備用と海上配備用に領域的に分かれている。

 具体的には低空・陸上用がパトリオットPAC3、高高度・陸上用がTHAAD、低空・海上用がスタンダード・ミサイルⅡ、高高度・海上用がスタンダード・ミサイルⅢというように立体的な構造になっている。そして陸・海・空軍のレーダーが連携して敵弾道ミサイルの早期発見、軌道確認、撃破に努める」(p190)

 

 日本ではPAC3は航空自衛隊高射部隊、THAADは青森と京都、スタンダード・ミサイルは「こんごう型」イージス駆逐艦に配備されている。

 

 「日本に対する差し迫った中長距離弾道ミサイルの脅威とは言わずも知れた北朝鮮のノドンであるが、中長期的には中国の東風21号なども対象となっていると考えていいだろう」(同)

 

 同書が書かれたのは2005(平成17)年であるが、現在は中共の東風21号も差し迫った脅威と見ていいだろう。更には、長期的には米国のミニットマンも脅威となる(その前に在日米軍が日本列島を自由に移動できることが問題であるが)。

 

 「ついでながら米国はミサイル防衛において核兵器を使用することも考慮に入れているようである。核ミサイルを防ぐのに核ミサイルを使うなどと言うのは一見、本末転倒にも思えるが、それなりの事情がある。

 と言うのも、恐るべき高速で飛ぶ弾道ミサイルを迎撃するというのは容易なわざではない。レーザーなども敵のミサイルが防護を固めれば効果のほどは怪しくなる。ところが核ミサイルで迎撃すれば、かなり離れた距離ですれ違っても核爆発の威力で敵ミサイルを確実に破壊出来るのだ」(p191)

 

 「大気圏外で小型核兵器で迎撃した場合、放射能汚染はかなり希薄化される。それでも地球環境にとって好ましくないのは言うまでもないが、自国が直接核攻撃されるよりはましということであろう。

 核軍拡競争は決して終わりを告げたわけではないのである」(p192)

 

 現実に北朝鮮でさえ、核の小型化を急いでいる。一方で我国は、核軍拡競争に参加すらしていない。一体どうして「三発目」から国土を守るのか。