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国家とは何だろうか

日本憲法と安全保障について考えるブログです。

【憲法小論Ⅱ】 「国民主権」という虚像

憲法小論

 主権という語は、①最高独立性、②統治権、③最高機関の3つの意味で用いられる。これについては前回の記事をお読みいただきたい。

 

ichijokanji.hatenablog.com

 

 では、国民主権とは何か。国家は国民の団体であると考えれば、天皇・皇族を含む(広義の)国民が主権を有する、ということになる。しかし国民主権とは、君主主権の対立概念であるから、この国民に天皇・皇族は含まれない(狭義の国民)。

 また君主主権とは、一般には君主が統治権の主体であるという意味で理解されているから、これに従えば国民主権とは、国民が統治権の主体であるという意味になる。しかし、統治権の主体は国家であるから、この理論は成り立たない。

 

 ならば最高機関だろうか。国家権力は、法律上の権力と政治上の権力とに分けられる。前者は名目上、後者は実質上と言い換えてもいい。帝国憲法では、法律上の権力は天皇、政治上の権力は帝国議会がそれぞれ分掌していた。正に君民同治の政治が行われていた。法律は、天皇の裁可によって法律上の効力を与えられるが、その法律案は必ず議会の協賛を経なければならず、また天皇立憲君主として裁可を拒むことは一度もなかった。

 日本国憲法においても法律上の最高機関は天皇であり、政治上の最高機関は国会である。従って日本国憲法第41条に定める「国権の最高機関」とは、国会は政治上の最高機関であることを宣言している。その意味では統括機関説を採ることになるが、詳しくは別に譲る。

 国会が政治上の最高機関である以上、国民主権とは、国民が法律上の最高機関であると解するしかない。しかし、凡て法律は天皇に奏上され(国会法第65条)、御璽を鈐した後公布される。事実上、形式的ではあるが天皇の裁可を経て法律として効力を持つことになる。国会の召集も、内閣総理大臣の任命も、最高裁長官の任命も、総て天皇の法律行為(国事行為)を待って法律上の効力を持つ。つまり、日本国憲法においても法律上の最高機関は天皇である。従って、国民が法律上の最高機関たることはない。

 国民が最高独立の権力を有することも有り得ない。それは国民の前衛政党が国家を統治する体制である。

 

 以上より、憲法上の「国民主権」とは空文でしかないことが明らかになった。

 

 しかし日本国憲法に定める国民主権に、あえて意味を与えるとすれば、議院内閣制では、内閣は国会を通じて間接的に国民の支持を得なければならず、つまり国民が国政上重要な地位を占めるという意味の「政治的美称」という程度だろう。