一条寛治のブログ

憲法と国防について考えるブログです。

軍政と軍令、自衛隊における「ねじれ」

(最終更新日:2018/1/25)

 

 軍政 

 

 軍政とは

軍事行政という意味で、軍の内部の管理を指す(鍛冶俊樹『戦争の常識』p62)

 

 軍は戦争のための組織だが、いつも戦争をしているわけではない。平時には基地や駐屯地にいて、訓練や研究、警備などの仕事にいそしんでいる。当然、基地や駐屯地の管理、人事や物品の管理が必要になる。また実際に戦争になっても、出入りや移動が激しくなるだけでこうした管理が必要であることには変わりがない。つまり軍隊といえども他の行政機関と同様の行政管理が必要なのである。(同同)

 

 行政機関の長が大臣であることに鑑みれば、軍政の長も大臣職ということになる。戦前の日本では陸軍大臣海軍大臣がこれに当たる。現在では大体どこの国でも国防省に統合されて国防大臣が軍政の長に当たっている。

 つまり国防省が軍を管理しており、その管理責任者が国防大臣ということになる(同同)

  

 現在の日本では、防衛省自衛隊を管理しており、その管理責任者は防衛大臣である。 

 

 

 軍令

 

 軍隊は平時には、他の行政官庁と同様の恒常業務に従事しているわけだが、ひとたび戦争となれば、臨機応変に動くことが必要となる。もちろんいかに臨機応変と言っても、各個バラバラに動いていたのでは駄目で、統一された指揮下で行動しなければならない。これを作戦指揮と言い、このための命令を軍令と呼ぶ。軍令上の長が自由に軍隊を動かせるわけだから、軍隊で最上の地位にあることになる。(同p63)

 

 通常、最高指揮官は最高政治権力者と一致する。もしこの両者が別の人物だとするとクーデターが容易に起こせることとなり政治が不安定化するからだ。

 最高政治権力者は国によって異なるが、西欧諸国では本来、国王(女王)であった。従って最高指揮権も国王が持っていた。

 米国の大統領などはそもそも国王の代わりに設けられた職だから、米国では大統領が最高指揮官である。(同p64)

 

 こうした例を見ると明らかなように、最高指揮官は軍隊に帰属した人物ではなく国家上の最高権力者なのである。つまり軍は軍以上の存在すなわち国家に忠誠を誓っているわけだ(同同)

  

 軍隊の最高指揮官は、国王や大統領などの国家元首が担う。これに倣えば、自衛隊の最高指揮官は天皇であるはずだ。

 しかし自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣である。これでは警察と同じである。

 

 

 参謀

 

 ところでしばしば軍隊のトップあるいは制服のトップとして紹介されるのは統合参謀本部議長とか参謀総長などである。これは誰しも不思議に思うところだ。

 軍隊で一番偉いのは作戦指揮権を持つ人つまり指揮官であり、それは通常、司令官とか総司令官などと呼ばれているのではないか。参謀は指揮官の補佐役だし、参謀本部というのは参謀の集まりである。そこの議長とか総長というのは要するに参謀を束ねている座長に過ぎず、つまり参謀であって指揮官ではない。それがどうして軍のトップなのであろうか?

 それはこれらの参謀はもっと偉い人に仕えているからに他ならない。最高の作戦指揮権を持っている人、つまり最高指揮官の補佐を彼らはしているのだ(同p63-64)

 

 参謀は幕僚とも呼ばれ、自衛隊にも統合幕僚監部がある。その座長は統合幕僚長であるが、軍令の長、即ち最高指揮官たる内閣総理大臣ではなく、軍政の長である防衛大臣を補佐している

 

 自衛隊を軍隊として運用しようとするならば、これらの「ねじれ」を解消しなければならない。

 

 

 ▼引用図書 

戦争の常識 (文春新書)

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